私は、生まれた時から犬が身近にいる環境で育ちました。
隣に住んでいた祖父母の家には犬がいて、犬のいる暮らしは当たり前のものでした。
その犬が亡くなってからしばらく犬のいない生活が続きましたが、私が10歳の時、実家で新たに犬を迎えることになりました。
それが、私にとって初めて子犬の頃から一緒に過ごした愛犬でした。
祖父母の家の犬ではなく、自分の家の犬。
毎日顔を合わせ、一緒に過ごし、気づけば私にとってかけがえのない存在になっていました。
愛犬が支えてくれた思春期
思春期になると、言葉にできないもやもやした気持ちを抱えることが増えました。
誰かに話すほどではないけれど、心の中にある苦しさや寂しさ。
そんな時、私を支えてくれたのが愛犬でした。
深い話をするわけではありません。
でも学校から帰ると、いつも尻尾を振って迎えてくれる。
声をかけると膝の上に乗ってきて、ただただ私を癒してくれました。
眠れない夜も、愛犬の姿を見るだけで心が穏やかになりました。
愛犬と触れ合う時間は、自然と心を落ち着かせてくれる時間でした。
別れを知っていても、また犬と暮らしたかった
愛犬が亡くなった時、私はすでに実家を離れていました。
最期に立ち会うことはできませんでしたが、知らせを聞いた時、心にぽっかり穴が開いたような気持ちになりました。
もう帰っても、あの子はいない。
いつも当たり前のように迎えてくれていた存在は、もういない。
そう思った瞬間、涙が止まりませんでした。
今でも思い出すだけで涙が出てしまいます。
子どもだった私は、母や祖母に一番大変なことは任せっきりでした。
だから、本当の大変さは理解できていないことも自覚していました。
犬を飼えば必ず別れの日が来ることも知っています。
それでも愛犬が私にくれたものは数え切れなくて、
別れの辛さは消えなくても、愛犬と過ごした時間は、なくてはならない、かけがえのない時間でした。
だからいつか自分が家庭を持ったら、また犬と暮らしたい。
ずっとそう思っていました。
「10歳になったらね」と約束した日
結婚し、子どもが生まれました。
息子が3歳の頃、たまたま立ち寄ったペットショップで子犬を抱っこさせてもらう機会がありました。
元々動物が大好きだった息子は、その日から毎日のように
「犬を飼いたい」
と言うようになりました。
私は何度も、
「今は無理だよ」
と伝えました。
そしてある日、
「10歳になったらね」
と言いました。
正直に言うと、その時は深く考えていませんでした。
忘れるかもしれない。
その頃には状況も変わっているかもしれない。
そんな気持ちもありました。
でも息子は忘れませんでした。
誕生日が来るたびに、
「10歳まであと◯年だね」
と数え続けました。
その姿を見ているうちに、
私は自分がした約束を簡単には破れないと思うようになりました。
登校しぶりの中で考えたこと
息子が小学校に上がると、登校しぶりに悩むようになりました。
学校がない日でさえも、学校に行きたくない気持ちが消えなくて
苦しんでいるのがわかりました。
私もどうしていいかわからず、親子で苦しい時間を過ごしていました。
そんな中で気づいたことがありました。
息子は動物と触れ合っている時だけは、本当に穏やかな表情をしていたのです。
学校のことも嫌なこともその瞬間だけはすべて忘れて、
ただただ嬉しそうに動物と触れ合っていました。
その時、私は愛犬に癒されていた子ども時代の記憶がよみがえりました。
我が家に犬を迎えるタイミングは今かもしれないと思いました。
我が家にやってきた大切な家族
そこから夫婦で何度も話し合いました。
本当に迎えられるのか。
責任を持って育てられるのか。
たくさん考えた上で、
「運命の出会いがあったら迎えよう」
と決めました。
そしてある日、
家族全員が
「この子だ」
と思う子に出会いました。
こうして愛犬は、我が家の家族になりました。
愛犬がくれたもの
犬を迎えたからといって、すべての悩みがなくなったわけではありません。
登校しぶりがなくなったわけでもありません。
でも、確かに変わったことがありました。
息子の表情です。
愛犬を迎えてから、息子の表情はとても柔らかくなりました。
朝になると、
「行ってくるね。待っててね。」
と愛犬に声をかけて学校へ向かうようになりました。
声色も表情も変わるほどのメロメロぶりで、兄弟のように過ごしています。
そしてそれは、息子だけではありませんでした。
私自身も愛犬に癒されていました。
登校しぶりに悩み、無意識にピリピリしていた私の心も、少しずつほぐれていったのです。
愛犬を通して、
「かわいいね」
「元気いっぱいだね」
そんなポジティブな言葉を交わす時間が増えました。
気づけば、親子で笑う時間も増えていました。
おわりに
私にとって犬は、ただのペットではありません。
言葉は話せなくても、
そっと寄り添い、
そのままの自分を受け入れてくれる存在です。
子どもの頃の私を支えてくれたように、
今は家族みんなを支えてくれています。
だからこれからも、
大切な家族の一員として、
たくさんの時間を一緒に過ごしていきたいと思います。
